有無を言わせない完成度によって、世界中のキーパー厨を黙らせることに
成功したジャーマンメタルの雄 HELLOWEEN。
キーパーの呪縛から解き放たれ、キャリア20周年を迎えた彼らが送り出す、
次なるアルバム、それは……
「Gambling With The Devil」
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・ 2520円(税込) ・ ビクターエンタテインメント ・ 2007年10月24日発売済 |
現在、世界中でメロディック・メタルの再評価・再発見が行われている。
それはあのメロディック・メタル不毛の地アメリカですらも例外ではない。
またMySpace では最近、音楽スタイルの表現として、"HELLOWEEN"
という言葉が使われる事もあるという。
そんな機運とも合致し、前作「守護神伝 -新章-」は世界中で高い評価を受け、
ライブツアーは実に34カ国93回にも及んだ。その模様は今年、DVDとしても発売されている。
(日本はともかく)欧州では、新興勢力に押されて、現在進行形のバンドとしては
存在を見失われかけていたバンドは、見事にシーンの中心へと再び、復活を果たした
のである。
とはいえ、皮肉な事だがそんな名盤の次ほど難しいものはない。
前作の成功がそのままプレッシャーとなるからだ(卑近な例だが、大吉を引いた
次の年のおみくじを想像してみようw)。また物理的にも、長期のライブによって
時間的制約が増すということがある。
しかし彼らは、 後者に関しては、「ヴァーチャル・プロダクション」という手法を用い、
制作活動を飛躍的に効率化することで。
前者の問題は、「Keeper ~3」を常に望まれることに対する、ある種の理不尽な
重圧から解放されたこと。そして何より、バンド内の極めて良好な人間関係から
生まれる余裕とケミストリーによって、あっさりと乗り越えてしまった。
ギターハーモニーでは、特にそれが顕著に感じられる。アルバム全編に渡る
練り込みと若々しいアグレッシブさは、とてもベテランバンドとは思えない。
良い意味で、初期のカイ在籍時の風を強く感じさせる。
呼吸が詰まる程に濃密な、緊張感に満ちたアルバムであった前作に対して、
今作は奔放で自由で弾ける様な勢いが感じられる。コンポーザー達が各々の
個性を活かした楽曲を披露してくれている。またライブ中から曲のアイデアを
集め始めた事も関係するのか、非常にライブ生えしそうな曲も多い。
らしさを残しつつも、常に多様で新鮮なHELLOWEENの音楽がここにはある。
HELLOWEENの新たなる黄金期を確信させる作品だ。
一方、作品のテーマやそれに伴う歌詞については、前作の延長線上にあり、
極めて重々しいものが大半である。
その中でもハイライトはやはり中盤のアンディによる三部作(トリロジー)であろう。
どの曲もそれほど長くはないが、それでいて一筋縄ではいかない曲ばかり。
ファンタジーを絡めつつも生々しく容赦の無い歌詞も併せて、正に渾身の大曲といえる。
なおこの三曲は、システム的にも曲間無しで続いて聴こえる仕様になっている。
今作が中弛みしないのは、真ん中をこの三曲がどっしりと押さえている事もある筈。
スピード・メタルでこの三部作を挟むという構成は、なかなか巧妙で憎い。
因みに、今作を「Better Than Raw」に擬える発言を、B!誌を始めいくつか
見かけたがあながち的外れでもない様に思う。別にそれは、単に二曲目にブルータルな曲があるから、というだけの理由ではない。
HELLOWEENを代表するアルバムといえば(諸説あるのは承知だが)
「Keeper Of The Seven Keys」「The Time of The Oath」
「Keeper Of The Seven Keys - The Legacy」の三作だろう。
いずれもライブ盤が出されているし、各バンドラインナップの頂点といえる作品だ。
「ベタザン」と「GWTD」は、それと同一メンバーで作られた次の作品という
共通点があるのだ。
今回のアルバムはイマイチ地味な印象だった「BTR」以上に受け入れられるのか。
是非とも、そうなって欲しいものである。
他に特筆すべきは装丁。HELLOWEEN歴代の中では最も良かった 「Dark Ride」に
匹敵するものだと思う。表面は立体感のあるデジパック仕様。開くと一頁ずつに、
曲を象徴した絵が載ったカードが数種類描かれている(守護神の札も)。
CDはルーレットを模したものとなっており、その下の台座にはサイコロが四つ
描かれている(ご想像の通り、6,6,6,カボチャ、だw)。
DRの絵も色彩もシンプルで迫力のあるジャケ・ブックレットの絵・写真も良かったが、
今回のも統一感があって中々良い。
評価は文句なしの即買え!。
公式サイトではアンディによる楽曲解説等も見ることが出来る。
スルー > 待ち > 普通 > イイ! > 満足 > 悶絶 > ネ申降臨
曲名 | 評価 | コメント | タイプ |
1 Crack The Riddle 0:58 |
- | Saxon のVo. Biff Byford がゲスト出演。 |
- |
2. Kill It 4:14 |
満足 |
ルーレットの効果音と重なるようにイントロが始まる演出はイカス。 曲は「Push」「Liar」の系譜に連なる、ブルータルナンバー。なんとアンディの作曲。 上記の二作で見られた以上に強烈な歌唱と、それでいてキャッチーなメロも耳を惹く。 「Kill It, Kill It, Kill It!!」 ああ、ライブで合唱してえ。 |
即効 |
3. The Saints 7:06 |
ネ申降臨 |
聖メタル。正に昇天ものの名曲。イントロからアウトロまで全て聴き所と言っても過言ではない。 7分の内、実に約2分がギターソロw ギターワークの素晴しさが際立つ今アルバム中でも、この曲は突出している。 個人的にアウトロは後一分位ずっと聴いていたかったw |
即効 |
4. As Long As I Fall 3:42 |
イイ! | シングル曲。「If I Could Fly」風のピアノイントロからbridge まではゆるゆると進み、chorusで一気に弾ける。 | スルメ |
5. Paint A New World 4:27 |
悶絶 | サシャによるネオ・ジャーマンメタル。強烈なスピードと(2.程ではないが)ブルータルさ。
とにかく滅茶苦茶カッコイイ曲だ。 ギターもイントロからツインで押し押し。ソロパートでそのフレーズが戻ってきた時の興奮たるや……。 そして最後の、綺麗に締めた所をブチ壊すというアイデアは、間違いなくヴァイキーのものだろうw |
即効 |
6. Final Fortune 4:46 |
イイ! | 巷ではやたら人気があるようだけど、個人的にはそれほどでもなかったり。 サビでもう一段階盛り上がってくれればなあ。 とはいえ、良い曲なのは間違いない。 |
即効 |
7. THe Bells Of The 7 Hells 5:22 |
満足 | 前作の「Occasion Avenue」をぎゅっと凝縮したような曲。
初聴時に一番衝撃を受けたのはこの曲だったかも。アンディらしく一捻りがあるけど、キャッチーという曲。 |
即効 |
8. Fallen To Pieces 5:53 |
悶絶 | Queenの「Bohemian Rhapsody」を彷彿とさせるややシアトリカルなパワーバラード。 変態的な曲展開による没入感はかなりのもの。サビメロの哀愁は流石としかいいようが無い。 |
普通 |
9. I.M.E 3:46 |
イイ! | アンディ十八番のハードロックナンバー。三部作最後ということで、
悩みを振り払う様な力強い印象。 風変わりなギターソロも耳を惹く。 |
普通 |
10. Can Do It 4:30 |
満足 | まるで学園ドラマの主題歌の如く。異常に爽やかで明るいw
曲調も歌詞も底抜けで、重い内容が多い本作ではある意味浮いている。 トリロジーの直後ということからも、 「Dr.Stein」や「Mrs.God」の様に、聴き手を引き上げる役割の曲だろう。 |
即効 |
11. Dreambound 5:57 |
満足 |
グラポウが作りそうな、インギーっぽいギター・オリエンテッドな一曲。とにかく弾きまくり。 | 普通 |
12. Heaven Tells No Lies 7:00 |
満足 | 6.よりもこちらの方が好み。イントロからもうクライマックスw 哀愁のクサメロをまきちらす疾走曲。 Chorusの盛り上がりと静かに余韻を残していくアウトロは、アルバムラストを飾るに相応しい。 |
|
13. We Unite(Bonus) 4:34 |
イイ! | マーカスの曲。ボートラとはいえ、クオリティは高い。 普通に聴き所のある曲だが、6. 12.とマーカス作のスピードメタルが三曲目(シングルも含めると四曲目)ということもあり、 少々満腹感を感じないでもない。 |
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